■ザ・タイガース・オン・ステージ (ポリドール)
A-1 ダンス天国~ラ・ラ・ラ / Land Of 1000 Dances ~ La La La
A-2 タイガースのテーマ / Tigers' Theme (Monkees' Theme)
A-3 ルビー・チューズデイ/ Ruby Tuesday
A-4 レディー・ジェーン / Lady Jane
A-5 タイム・イズ・オン・マイ・サイド / Time Is On My Side
A-6 アズ・ティアーズ・ゴー・バイ / As Tears Go By
A-7 スキニー・ミニー / Skinny Minnie
B-1 僕のマリー
B-2 シーサイド・バウンド
B-3 モナリザの微笑
B-4 ローリング・ストーンズ・メドレー / Rolling Stones Medley
B-5 アイ・アンダースタンド / I Understand
GSブームの狂熱を今に伝えるレコードとしては絶対に外せないのが、昭和42(1967)年晩秋に発売された本日掲載のLPかと思います。
演じているタイガースは説明不要とは思いますが沢田研二(vo)、加橋かつみ(vo,g)、森本太郎(vo,g)、岸部おさみ=現・岸部一徳(vo,b)、瞳みのる(ds) という5人組として同年2月に公式レコードデビューするや忽ちにして人気グループになった存在でしたが、ルックスに恵まれていた事やヒット曲のほとんどが職業作家からの提供作品で、しかもオーケストラを豪華に使ったクラシカルな路線とか、とにかく全盛期の印象があまりにもアイドルど真ん中なもんですから、ロックバンドとしての本質は些か評価されてはいないでしょう。
しかしこのアルバムはそこに至る上昇期の勢いがきっちり録られたライブ盤で、しかもタイガースにとっては初めてのLPなんですから、一概に本末転倒とばかりは言えません。
そして昭和42(1967)年8月22日、大手町サンケイホールで開催された初リサイタルの音源という録音データを確認すれば、収録演目のほとんどがローリング・ストーンズの十八番のカバーというあたり、また狂騒する女の子の大歓声も激烈というところから、極言すれば本家(?)ストーンズが同時期に出していたライブ盤「ガット・ライブ・イフ・ユー・ウォント・イット!」を否でも想起させられるのは、逆に言えばタイガースにとっては本望なのでしょうか。
いゃ~、これが当時のニッポンのロックの実相とサイケおやじは思いたいですよ。
とにかく初っ端からウィルソン・ピケットやウォーカー・ブラザースでお馴染みの「ダンス天国」の盛り上がりコーラスから実はモンキーズのテーマを替え歌した「タイガースのテーマ」だけでツカミはOK!
もちろん録音状態は当時の事ですからセンターに沢田研二のボーカル、加橋かつみのギター、岸部おさみのベース、左に森本太郎のギターやハーモニカ、そしてコーラスには岸部おさみ、そして右には瞳みのるのドラムスと掛け声、加橋かつみのボーカルというチャンネル配分によるステレオミックスながら、演奏やボーカル&コーラスの不安定さは言わずもがな、所謂「ころがしのモニター」が未だ無く、しかも前述したとおり、ワーワーキャーキャーと大騒ぎの現場の状況を考慮すれば、なかなかロックの本質が楽しめるように思います。
そしていよいよ始まるのが「ルビー・チューズデイ/ Ruby Tuesday」「レディー・ジェーン / Lady Jane」「タイム・イズ・オン・マイ・サイド / Time Is On My Side」「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ / As Tears Go By」と続くストーンズの泣きメロカバーで、当然ながらド頭から全てが英語で歌われていながらも、そこにタイガースが演じているという付加価値は絶対という雰囲気が、とにかく素晴らしいところです。
中でもカタカナ英語で歌われる「タイム・イズ・オン・マイ・サイド / Time Is On My Side」は微笑ましいというよりも、味わい転じて迫力と成す? みたいな快演じゃ~ないでしょうか。
こうして迎えるA面の〆がトニー・シェリダン&ビートルズのR&Rカバーという「スキニー・ミニー / Skinny Minnie」なのも、なにやら憎めません。
さて、そこでB面にはお待ちかね、「僕のマリー」「シーサイド・バウンド」「モナリザの微笑」というデビューからここまでのシングルヒットの三連発で、もはや観客席は興奮の坩堝となり、加えて関西弁のイントネーションも初々しいMCも楽しさ倍増のポイントになりましょうか、まさにGSブームの真骨頂!
ですから「ローリング・ストーンズ・メドレー / Rolling Stones Medley」として演じられる「Everybody Needs Somebody To Love ~ Pain In My Heart ~ I'm Alright」が、これまた完全に前述したストーンズのライブ盤抜きには語れないという実相も、今となってはGSよりはブリティッシュビートのファンが様々な意味で共感出来るものと思います。
そして大団円の「アイ・アンダースタンド / I Understand」はハーマンズ・ハーミッツの演目カバーなんですが、なにゆえにここでやっているかは聴いてのお楽しみ♪♪~♪
あぁ~、久々に聴いてみて、なかなか良く練られたプログラム構成を痛感させられましたよ。
ということで、タイガースはスタジオレコーディングではほとんど演奏していないのが定説なので、今も昔もライブの現場での演奏はターヘの決定版と決め付けられるわけですが、そうとばかりは決して言えません。
そりゃ~、上手いと言うつもりもありませんが、ロックは上手くないからこそ、なにをやってもロックになるのだっ!? というレトリックを弄するのは恥ずかしくなるばかり……。
それでもこのLPにおけるタイガースの躍動感は、間違いなくロックであり、その場に集ったファンの衝動も、また然りです。
う~ん、やっぱりGSブームは我が国のロック全盛期であったんですよ。
本当に、そう思います。